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SPA!という人が書いているブログのようなもの。主な内容は電波ですが、RPGツクールとか、ゲームの縛りプレイ(難度的なものではなく、嗜好的なもの)とか、やりたいことを適当に垂れ流しております。
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【ガンダムカードビルダー縛りプレイ】
 ・ルール
 ・目次

 今回はテキスト部分だけ。
 少尉昇格直後なので、話的にもある種の転換点、みたいな。
 

 ・第38戦目~(2008/11/21)



***

<→続きから>

 撤収準備に追われる補給基地の一角で、ジャン・リュック・デュバル少佐の搭乗するMS-09K2『ドム・キャノン』は、旧型のザクと共に荷役作業に従事していた。
「申し訳ありません少佐。このような雑用をお任せてしまって」
 通信の声は部隊の華、ジェーン・コンティ大尉。
「なに、構わんさ。君のご自慢のハイゴッグは、物を掴むのに適した手を持っていないのだから、仕方あるまい」
 デュバルの返答は若干の言い訳を含んでいた。なぜなら、空調を効かせている愛機のコックピットの中のほうが、ねっとりと絡みつく東南アジアの外気よりもマシに思えるからだ。


 デュバルら第53MS機動戦隊の面々は北米大陸へ帰還するべく、この補給基地に対し輸送協力をするように交渉を試みた。その結果、輸送の条件として、MSを運用しての物資の運搬作業を要請されていた。

「デュバル少佐、その物資は第3ブロックに待機中のカーゴへ搬送して頂きたい。中には爆薬を満載しているから、取り扱いには気をつけてな」








 デュバルに指示を出したのは、旧式のMS-05『ザクⅠ』を手足のように扱うベテランパイロットであり、この補給基地の第一任者でもある、ガデム大尉であった。中規模の補給基地とは言え、尉官クラスが指揮を取るのは稀であったが、既に先任の基地司令はこの撤収作戦に関与することなく後方へ脱出したということだった。
「了解した、ガデム大尉」
 デュバルは、モニタに移る旧型のザクを見据えて返答した。ガデム自身も老練なパイロットであるが、彼自身が搭乗する機体もまた、あちらこちらに補修を重ねており、幾多の戦いを潜り抜けた風体を感じさせるものであった。

 MS-05ザクⅠ。その製造コストと汎用性が特に評価され、ジオン軍の制式MSと採用されたことになった日のことを、デュバルは決して忘れない。
 かつて行われた、MS制式化の為のトライアルの際に、精密作業のテストにてザクⅠが見せた媚を売るような器用さに、デュバルは虫唾が走った。確かに機動兵器としてでなく作業用重機モビル・ワーカーとしてであれば、ザクは大変優れた機体であった。
 しかしその"汎用性重視"に"特化"した機体性能を差し引いても、ガデムの操縦技術は大変に丁寧なものである。デュバルはMSの実戦配備からザクⅠと共に戦ってきた老兵の操縦技術に少なからず驚嘆した。そして、それが今やこのような明日にも打ち捨てられるような補給基地で、物資の撤収作業に勤しむその姿に、老いた戦士の哀愁を禁じ得なかった。
 
 ドム・キャノンは物資の詰まったコンテナを抱え、カーゴの傍へと重い歩を進めた。ドム・シリーズの特徴とも言えるホバー走行は、あくまで機動戦闘中に効果を発揮するものであり、このような基地内での通常歩行に関しては、機体重量がある分ザクのそれよりも劣っている。その証拠に、ドム・キャノンは後からやってきたはずのガデムの旧ザクに、横へ並ばれてしまった。
 
「猫の手も借りたいところだったが、まさかドムの手を借りられるとは思わなかったわい」
「こちらもMSで荷物運びをやらされるとは思わなかったがね」
「不測の事態はお互い様と言うことだな。まぁ、おかげでファットアンクル一機分のスペースくらいは何とか確保できそうだ」
 デュバルはファットアンクル輸送機の搭載スペースを計算した。デュバルら第53MS独立部隊が現在運用している機体は、デュバルのドム・キャノンに、強奪したガンダム『GP02』、更にはコンティ大尉が独自のルートで入手したハイゴッグの3機であったが、何れの機体もかなりの重量があり3機を同時に搭載することは不可能に思えた。

「機体の放棄も止む無し、か……」
 予備の弾薬も心細くなってきた愛機。
 半壊寸前の新型鹵獲兵器。
 投入場所が限定される局地専用MS。
 どの機体とて、即の戦力としては心細いものであった。デュバルはコックピットの中でため息をついた。

 

「ガンダムの修理状況はどうなっているかね」
 一仕事を終えてMSから降りたデュバルは、額の汗を拭いながらコンティ大尉に尋ねた。基地のMS格納庫では、連邦から奪取したガンダムに何人ものメカニックマンがガンダムに取り付いて応急修理を行っている。この新型ガンダムは北米大陸到着後、ガルマ大佐に引き渡す予定であったため、見てくれだけでも最低限の補修は行わなければいけなかった。
「幾らかはマシになったようです。しかし、左腕部アクチュエーターの破損が酷く、こればかりはこの基地の設備と物資ではどうにもなりませんね」
 コンティ大尉の冷ややかな口調に、デュバルはどこか投げやりなものを感じた。総帥府からGP02を事実上放棄するという指令を受けてから、どうにもコンティ大尉は虫の居所が良くないようであった。デュバルはコンティ大尉の態度に多少の違和感を覚えながら、彼女の横顔をちらりとのぞき見る。その眼差しに当のコンティ大尉は気づいたのか、気づかなかったのか――、ともかく彼女は振り向いた。

「左腕が上がらなくちゃ、荷物運びを任せるわけにはいかんな」
 デュバルの背後から、ガデムの声がした。
「ガデム大尉、協力に感謝します」
 コンティ大尉が敬礼で迎える。ガデムはそれに対し軽く手を上げただけで、そのまま汗にまみれた白髪に手をやった。
「どうせ大半の物資は置いていくことになる。使える物はそっちで持って行ってくれて構わんよ。もっとも連邦製の新型MS用のパーツばかりは倉庫のどこを探して落ちてないと思うがの」
 言いながら、ガデムは白い連邦の機体――ただし装甲はあちこちに醜い焼け焦げを残したもの――を見上げた。
「ほぅ、こいつがウワサの新型ガンダムか。ワシの船をやった奴よりも、ずいぶんといかつい顔をしておるな」
「ガデム大尉は、別タイプのガンダムと交戦したことが?」
 デュバルは好奇心から尋ねる。
「いわゆる白い奴、じゃな。ルナⅡの近くで、あやつにパプワを沈められた。その帳尻合わせの結果がこのザマよ」
 そういうと、ガデムは軍帽を深く被り直し、MS格納庫の出口へと歩いていった。デュバルは何も問わず、老いた兵士の煤けた背中を見送ることしかできなかった。

 ガデムの姿が見えなくなってから、コンティ大尉が静かに口を開いた。
「ガデム大尉は、かつて宇宙攻撃軍で補給部隊を指揮していました。しかし部隊をかの木馬の部隊に壊滅させられ、責任を問われた結果、地球方面軍の兵站任務、つまりこの基地へと転属になったそうです。表向きは、補給部隊での実地経験を買われてとのことですが……」
「要は左遷と言うことか。適材適所とも言えなくもないが、補給任務一つにしてみても、宇宙には宇宙の、地球には地球のやり方があるだうに」
「それほど、我がジオンは人材不足ということなのでしょう」
「コンティ大尉、今のは聞かなかったことにしよう。殊更、君のような総帥府の人間が、ジオン兵の戦意を失わせるような発言をするのはあってはならないことだからな」
「かしこまりましたわ、デュバル少佐。それでは、総帥府仕えの秘書官らしい仕事を、今この場でご覧頂けますでしょうか?」
 コンティ大尉は小脇に抱えていた書類を、デュバルに手渡した。



「……ラサ秘密工廠基地の友軍部隊か。あそこにいるのはギニアス・サハリン少将の軍団だったな」
「はい、極秘でジャブロー攻略用MAの開発を行っておられます」
「君はたった今、極秘といったばかりではないか。そんな連中が、陥落間近の補給基地一個を救うためにザンジバル級でも遣すとも?」
「基地からの脱出は我々だけでやるしかありません。問題はその後のことです。この基地が落ちれば、間違いなく連邦軍は追撃してくるでしょう。ファットアンクルの巡航速度では、ミノフスキー粒子下だとしても連邦の戦闘機にすぐ捕捉されてしまいます」
 ジオンの誇る大型輸送機・ファットアンクルも、所詮は超大型のヘリコプターに過ぎない。既存の戦闘機相手ならばなんとか持ちこたえることもできようが、そこは「数の連邦」の脅威である。1機に発見されれば最期、腐肉にたかるハゲタカのように数多の戦闘機が飛来してくるだろう。そしてファットアンクルにそれらの猛追を振り切る速度も火力も無い。コンティ大尉の懸念は尤もだった。

「幸運なことに、現在マドラスの連邦軍が攻勢に出ており、ラサ基地試作のMAは、飛行テストのルートの変更を余儀なくされているとのことです。そのテスト区域の下調べとして、ここから最寄の基地にノリス・パッカード大佐率いる特殊戦術MS隊が駐屯中との情報を得ました」
 幸運と言う単語を聞いて、デュバルは顔をしかめた。どうにも、この総帥府の女史はジオン軍の現在の在り方に対して、不満、或いは疑問を抱いているようであった。それを隠そうともしないのは意図的な思惟によるものなのか。

「ノリス大佐、か。武人の鑑として噂には聞及んでいるが」
 ともかく、デュバルはコンティ大尉の不謹慎な言動については考えないようにした。


 デュバルは手渡された書類に視線を移した。
「…しかし、距離的にも多少離れているし、向こうには向こうの任務もある。そうそう都合よく救援にきてもらえるものかな?」
「対岸の火事は傍観できても、自分の家に火が廻りそうなら否が応でも行動を起こすものと思われます」
 意図的に戦線を拡大する。コンティ大尉は暗にそう言っているのだ。
「まさに、かの友軍の位置は対岸だ。敵軍の目をむこうに引き付ける方法があるのかね」
「私の機体は、精密作業や荷物持ちには向いておりませんが、水中での機動力にはそこそこ自信がありまして」
 デュバルは口元を歪めた。
「我らが勇敢な秘書官殿は、自らMSを操縦して、囮になってくれると言うのかね」
「どのみち、『箱舟』にはこれ以上MSを載せる余地もありませんでしょうから」
 またもやコンティ大尉の捨て鉢な言い方である。しかし彼女の思惑はどうあれ、デュバルは事実だけを述べた。
「君は元々ダグラス・ローデン大佐の配下であり、我々の部隊にはあくまで出向支援という形で随行しているに過ぎない。あのハイゴッグにしても、いったいどのようにして調達したものなのか、私は把握していないのだからな。私には君を引き止める権限など持たんよ」
 コンティ大尉が志願しなければ、ファットアンクルに乗らず、残るのはデュバルのドム・キャノンであっただろう。最悪の場合、彼は基地陣地で対空砲としての役目に終始する覚悟すらしていたのだ。
  
「ありがとうございます、デュバル大佐」
 コンティ大尉は確固な決意を表すかのように、鮮やかな敬礼で応えた。
 危険な任務に際して、なぜ感謝されるのかはデュバルには測りかねたが、コンティ大尉がデュバルに対して敬礼をするのは初めてだったかのような気がしたので、デュバルは戸惑いを覚えずにはいられなかった。



<→続く>
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